他社が目をつけなかったファン層を獲得、玩具メーカー「ファンコ」の飛躍

危機管理

玩具メーカーのファンコ(Funko)は5年以内に年商10億ドル(約1,130億円)達成を目指しているが、その名前を聞いたことがないという人も多いかもしれない。

ハズブロ(Hasbro)やジャックス・パシフィック(Jakks Pacific)などの玩具メーカーが得るライセンス契約が年間4~5つであるのに対し、ファンコは200超のライセンスを取得している。

「それが他社との違いだ」と、同社のブライアン・マリオッティCEOは言う。

ファンコはディズニー、スター・ウォーズ、DCコミックスやマーベルとライセンス契約を結んでいるだけでなく、『ゴールデン・ガールズ』や『ウォーキング・デッド』、『となりのサインフェルド』のようなテレビ番組ともライセンス契約を結んでいる。これらの関連商品は生産コストがきわめて低いため、他の玩具メーカーが無視しているファン層の要望に応じてグッズ生産を行うことができる。その結果、これらのファンを獲得できるのだ。

「ポップカルチャーを理解していない人が多く、そういう人は我々が単に一時的に流行している製品をつくっていると考えている」とマリオッティは言い、自社の顧客をスポーツファンに例えてこう指摘する。「スポーツファンが好きなチームのジャージやマグカップを買うのと同じこと。その対象がビデオゲームやテレビ番組というだけの違いだ」

従来の玩具メーカー各社がビデオゲームのファンの存在に気づいてこなかったことが、ファンコにとって大きなチャンスとなった。「プロゲーマーたちが参加する大会にはマディソン・スクエアガーデンを埋めるほどのファンが集まる」とマリオッティは言う。

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さらにファンコには、こうしたキャラクターのファンだけではなく”独自のファン”もいる。例えばサンディエゴやニューヨークで開催されるポップカルチャーのイベント「コミコン」でファンコの出展ブースにいるのは、従業員ではなくボランティアたちだ。彼らは同社のスタッフとなる(抽選制)ために、徹夜で行列に並ぶ。お目当ては、報酬代わりに貰える限定アイテム。こうしたファンはほかの玩具メーカーにはいない。

これが同社に巨額の利益をもたらしている。ファンコの2016年の収益は4億2,500万ドル(約480億円)。収益は毎年2桁の伸びを記録しており、5年以内には(他社の買収なしに)10億ドルに達することが可能だと見込んでいる。ウォルマートでの売上は前年比300%増で、2017年春から全ての店舗でファンコ製品が販売される。

同社の事業の44%はバットマンやスター・ウォーズなど不動の人気を誇る製品で、そのほかの55%がテレビ番組や映画の関連グッズが占める。2016年にはトップ10映画のうち9つと提携した。

フィギュアなどの収集というと、映画『40歳の童貞男』でスティーブ・カレルが演じたようなオタクを思い浮かべがちだ。しかし「今では当社の顧客の55%が女性だ」とマリオッティは言う。ポップカルチャーは200億ドル(約2.2兆円)規模の市場で、顧客の平均年齢は30歳、つまりそれなりの金額を趣味に費やすことのできる年代だ。

ファンコの製品の多くは10ドル(約1,130円)未満で、多くのコレクターにとって手の届きやすい価格だ。マリオッティは主にボブルヘッド(首振り人形)を製造していた頃に同社を買い取り、製品ラインを変え、パッケージもコレクター受けしやすいものに変更した。現在のパッケージは目立つ場所にコレクター番号が記載されており、積み上げて保管しやすいようになっている。

ワシントンと拠点とする同社は、2015年に未公開株投資ファンドのACONインベストメンツがファンダメンタル・キャピタルから買収した。今のところは非公開企業だが、財界への働きかけを行っており、これが株式公開に向けた動きを示唆している可能性もある。

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