『週刊ダイヤモンド』2月4日号の第1特集は「上げ下げマンション大調査」です。マンション市場に異変が起こっています。2016年に新築マンションの供給戸数を中古マンションの成約件数が初めて上回りました。まさに中古時代の到来といえます。そこで本特集では、中古物件を売りたい人、買いたい人双方のために、新築時の価格から現在価格への騰落率を徹底調査しました。併せて東京五輪後の2021年の予測価格も掲載しています。
野村不動産が手掛ける、総戸数632戸の大規模マンション「プラウドシティ大田六郷」。
京浜急行本線の雑色駅から徒歩12分の距離にあり、近くには多摩川が流れる閑静な地域だ。
1月中旬。環八通り沿いにあるモデルルームを訪ねると、同じ時間帯に来訪の予約をしている人たちの姿が全く見えず、「自分たちだけなのか」と一気に不安になった。
アンケートに記入した後、マンションのコンセプト映像が流れるシアタールームに案内されると、40代とみられる男性が先に座っていた。すぐに扉が閉まり、たった2組だけの上映会が始まった。
その後、モデルルームを見て回り、接客スペースで販売予定価格表を見せられて驚いた。専有面積86m2の4階の部屋で、売り出し価格が6500万円を超えていたからだ。
マンション周辺で、4000万円台後半の新築一戸建てが数多く売り出されている中で、あまりに強気の価格設定に目を疑わざるを得なかった。
この売り出し価格でも買い手が付いているのかと担当者に聞いてみると、販売表を出して青く塗られた「分譲済み」のマークが並んでいる箇所を指さし、「内覧された方は皆さん気に入っておられます」と笑顔で返してきた。
ただ、販売表をよく見ると、グレーで塗りつぶされている箇所が多く見受けられる。今後販売する予定の部屋のようだ。予定時期を聞いてみると、「2月上旬にも」ということだったが、そもそもこのマンションの入居予定時期は、3月下旬である。
入居を間近に控えた段階で、全体のおよそ3分の1の部屋を、まだ売り出せていない“異状事態”にあったわけだ。
このマンションは、江崎グリコの工場跡地に立っているが、「2年ほど前の目玉物件。土地の入札で野村さんは、数年前の相場の倍くらいの価格で仕入れたはず」(業界関係者)との指摘もあり、販売不調であっても、容易には値下げできない苦労がにじみ出ているようだった。
今、新築マンションが驚くほど売れていない。
その月に新規供給されたマンションの契約率を表す初月契約率が、好不調のラインを示す70%を割り込んでいる。
しかも、1期当たりの販売戸数を極限にまで絞り込むことで、契約率を高く見せる“かさ上げ”を図った上でのことだ。
極め付きは、新規供給戸数の大幅減少だろう。不動産経済研究所によれば、2016年の新築供給戸数は3万5772戸。ピークだった2000年の9万5635戸の半分どころか、4割弱にまで沈み込んでいるのだ。
片や、中古の成約戸数はじわりと上昇を続け、16年には3万7189戸を記録(東日本不動産流通機構調べ)。新築の供給戸数を中古の成約戸数が抜き去るという“逆転現象”が起こっている。
新築が売れない理由は明白だ。新築マンションの価格が高騰し過ぎたため、購買層の手が届かないレベルに達しているからだ。
そのため、新築の購入を諦め、中古に流れる人が増えているというわけだ。
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